ずっとあなたが好きでした
何にも手につかず、何をやるにしてもやる気が起きず、ただコンパだけは繰り返し、けれど気に入る人は一人も現れず、気付けば10月も終わろうとしていた。

もう色々な事がどうでも良かった。

どうでも良かったけど、俊也以外の人と付き合う気には全くなれなかった。

帰り道、バスがなかなか来ない日は、ブックオフに寄り浸っては漫画を読みふけった。

読めば読むほど、漫画のヒロインに憧れ、こんな素敵な男性が現れたら良いのにと夢が膨らみ、現実逃避をしてしまった。

そして、いつか自分にもこんな日が来ると信じてしまう事もあった。

けれど、読めば読むほど、現実とのギャップに突き付けられた。

皆が皆、少女漫画の様な青春は送れない事。

学校生活は、良い友達に囲まれて、好きな人が出来て、恋が実ってなんて事ばかりでは実際はない事。

皆誰でもヒロインにはなれる訳ではない事。

色々突き付けられた。

ヒロイン以外にスポットライトが当たらないから、ヒロインになれない私は、どう前向きに生きて良いか分からなかった。

私はこれからどうしたら良いのか誰かに教えてもらいたかった。

この頃、店内にはよく「浜崎まゆみのhanavi」が流れていた。
「会いたい、ねぇ会いたい。記憶の中の私に向けられた笑顔は優し過ぎたよ。もうどうしようもない。」

私はこの歌詞が頭から離れず、胸が痛んだ。

もうすぐ冬休みになろうとしていた。

今度は田川くんが、冬休みにカラーガードの会を提案してくれた。

私は行こうか行かまいかもの凄く迷った。

時間とは凄いもので、一日一日過ぎていけばいくほど、私の俊也への気持ちが少しずつ風化していった。

俊也の気持ちは、まだあったけれど、だんだん薄れつつあったし、俊也に会ってしまったら、薄れつつあった気持ちにまた火が付きそうで、怖かった。

しかも、俊也に会って、本人から直接、彼女の話を聞かされたら、今度こそ立ち直れないと思った。

伊藤くんもそんなに俊也と仲が良かった訳でもないから、俊也に彼女とはどうなったかなんて、しつこく聞けないと言っていた。

一か八かで、行くなら行く、行かないなら行かないと決めるしかなかった。

やっぱり、私は俊也に会いたくて、四ヶ月ぶりに俊也に、皆に会う事に決めた。

けど、行ってすぐやめとけば良かったと思った。


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