ずっとあなたが好きでした
「違うの?」

俊也は寂しそうな顔をした。

「そうだけど…。大好きだけど…。」

「矢田…」

「嬉しいよ、マジで。」

私は恥ずかしくなって、下を向いた。

俊也も黙っていた。

暫く沈黙が続いた。

「矢田!」

「え?」

「何で、バレンタインくれなかったんだよ?」

「終業式の日、私振られた様なものだったし…。矢吹くん、その頃、水原さんと仲良かったよね?」

「水原とは何もねーよ。」

「水原さんがっていうよりも、私自信がなかった。私からもらっても迷惑だと思ってた。」

「俺、矢田が誰にあげるか気になってしょうがなかった。その好きな奴にやるのかなってマジ気になった。俺…欲しかっんだ。見舞いに来てくれたりしたから、矢田も少しは俺の事想ってくれてるのかなって期待してた。学校終わったら、速攻家に帰って、待ってたんだ。結局、濱田達しか来ねーし、マジ凹んだよ。」

「私、逃げてた。初めから、バレンタインなんてないものだと思い込もうとしてた。けど、今年は…」

「くれよ!」

俊也は下を向いて、照れながら言った。

「え?」

「くれよ。矢田のだったら、どんなのでも良いよ。俺、嬉しいから…」

俊也は凄く恥ずかしがって笑っていた。

「…。分かったよ。矢吹くん。絶対渡すね。」

「矢吹くん?」

「ん?」

「第二ボタン…。矢吹くんの第二ボタン。私、欲しかったな。」

「あれな、渡したかったんだ…。」

俊也は困った顔をした。

「どうしたの?何かあったの?」

「俺、絶対矢田に第二ボタン渡そうと思った。矢田に渡しに行こうとしたら、濱田が来て、気付いたらなくなってた。だっせーよな。俺、濱田に言えなかった…返せって。そんで、色んな奴と写真撮ったりして、気付いた時には矢田はとっくに帰ってていなかった。」

「私…いても仕方ないと思って、帰っちゃった。矢吹くん、私に渡そうとしてくれてたんだ…。」

思わず、凄く嬉しくなってしまった。

「でも、俺…矢田を忘れる為に矢田に似た子と付き合った。そんで、その子を好きになりかけた…で、振られた。俺、振られて気付いたんだ。俺はその子を好きになったわけじゃなくて、矢田に似てたから、好きだったんだって。その子と矢田を重ねて見てたんだ。美加は俺よりも俺の事分かってたんだな。だから愛想を尽かして、俺を振ったんだ。でも俺、振られてから…」
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