初恋
風を切りながら自転車が走る
そして、下り坂にさしかかった時
あたしは、落ちないように拓海くんのブレザーのすそをキュっと少し掴んだ。
下り坂を過ぎ、学校まであと少し、というところで
「奈緒、昨日なんかあったの?」
といきなり拓海くんに聞かれ
『えっ!?』
昨日のことをよく思い出す
思い出すたび、思わず顔がにやけそうになるけど必死にそれを抑えて考える
『んー……なんで?』
拓海くんに聞かれるようなことは特に何もなかったと思う。
「いや、何でもないやっ」
と笑って拓海くんは学校の前で自転車を止めた。
そしてあたしがおりると拓海くんは、駐輪所に行ってしまった
『……なんだったんだろう?』
少し疑問に思いながらも拓海くんを小走りで追いかけた。
『拓海くんっ!乗せてくれてありがとねっ!』
「ん?おうっ!いつでも乗せてやるからっ」
拓海くんは振り返って笑いながら言った