初恋
そう思って蓮弥の方を見ると、一瞬目が合った気がするけど、すぐにその視線はあたしの後ろの方の何かに向いていた。
何、見てるんだろう。
そう思って振り返ると
「…おま、木下っ」
すごい勢いで蓮弥は教室から飛び出していってしまった。
『木下って…木下海、斗…?…ぁっ…っ!!』
蓮弥が叫んだ名前が海斗の事だと分かった途端に、さっきあった出来事があたしの頭の中に、鮮明に蘇ってきた。
『いやっ…やっ、ゃだっ』
あたしは頭を抱えて膝から崩れ落ちた。
「は?奈緒っ!?どした?木下がどうかしたのか?」
良太が心配して駆け寄ってきてくれた
そして、良太が近づいて来て、しゃがみ込み、目が合った瞬間
『っ……ゃ、いっいやぁぁぁあっ』
心配して、あたしの様子を見ようとしてあたしに顔を近づけた良太と、あたしにキスをするために近づいてきた海斗の顔が重なった。
──ドンッ
「いってぇ」
無意識のうちに、良太を突き飛ばしていた。
『ぁ…っご、ごめんなさいっ…』