【B】君の魔法



静香さんの目が
私の視線を捕らえると
カツカツとヒールを
響かせながら
近づいてきて 
無言で私の頬を打った。





打たれた頬に
手を添える。




社員が大勢いるなかの
突然の仕打ちに……
唇を震わせるしかなかった。





「あなたのせいよ。

 あなたが……
 秘書室になんて来るから」




もう一度、
振り上げた彼女の手。






もう一度、
打たれることに
覚悟して反射的に
目を閉じる。




ただ……
その手は私に届かない。



ゆっくりと目を開いて
確認すると
武流さんが、
彼女の腕を寸でで
受け止めてくれてた。



< 109 / 339 >

この作品をシェア

pagetop