【B】君の魔法
静香さんの目が
私の視線を捕らえると
カツカツとヒールを
響かせながら
近づいてきて
無言で私の頬を打った。
打たれた頬に
手を添える。
社員が大勢いるなかの
突然の仕打ちに……
唇を震わせるしかなかった。
「あなたのせいよ。
あなたが……
秘書室になんて来るから」
もう一度、
振り上げた彼女の手。
もう一度、
打たれることに
覚悟して反射的に
目を閉じる。
ただ……
その手は私に届かない。
ゆっくりと目を開いて
確認すると
武流さんが、
彼女の腕を寸でで
受け止めてくれてた。