【B】君の魔法
「あの……。
社員さんの会話が聞こえたの。
会長室の
重要な資料が盗難にあったって……」
俯いたまま、
呟く尊子。
「あぁ。
確かに会長室から
データーが一つ抜き出された。
ただ……それは
俺にとっては
大した事ないよ。
ただ気がかりなのは
いつも鍵がかかっている
あのエレベーターが
ロックもされずに
一階で放置されてたことだ」
そう。
確かに……
彼女に俺は、
迎えにいった
エレベーターの中で話したはず。
「柳たちと
うまくいってないのか?」
思わず零した言葉に
彼女の体はピクリとなる。
そして、無理に微笑んで
小さく切り返した。