【B】君の魔法
「そんなことないわ……。
私が悪かったの。
エレベーターに
鍵をかける方法を
仕事に夢中で
忘れたのよ。
聞いておくのを。
気がついたら誰もいなくて
そのまま出掛けてしまったの」
やっぱり……
そうやって君は、嘘をつく。
嘘の中に
その身を置いて、
ガチガチに
固めてしまうんだね。
そのまま
黙り込んでしまった彼女。
沈黙の車内に
耐え切れなくて
思わず音楽を流す。
流れる音に
スピードを加速させていく。
20分後、
自宅の門を潜った
車は駐車場で
ゆっくりと止まった。