【B】君の魔法
そんな二人を
見ながら……
心がチクリと痛みを伴う。
ただ……
黙々とこの場所で仕事をこなして
終業時間を待ち望む。
就業時間が終ると……
武流は私だけの
武流になるから……。
「尊子。
帰ろうか……」
会長室を出て……
帰宅準備中の私に
優しく声をかける武流さん。
デスクを整頓して、
自分の鞄を手にすると、
ゆっくりと立ち上がって
彼のもとへと向かう。
「お疲れ様でした」
いつもの言葉をかけて。
その背後で、
静香さんの痛い視線を
感じながら。