【B】君の魔法
相変わらず、
秘書室での関係は
お世辞にも
上手くいってるとは
思える状態ではなかったが、
仕事だけは義務的にこなし
必要最低限の言葉以外は
交わすこともなくなった。
ふと……
その場所から
動き出そうと
一歩踏み出して
顔を上げたとき……
見慣れた体型の……
見慣れぬその人が
急ぎ足で、
人の少ない街中を
走っていく。
「尊子……」
……こんなにも……
尊子の存在が
大きかったのか……。
こんなにも……
彼女を見つめただけで
心が……弾んでいく。