【B】君の魔法



「いいんですかっ。
 実は、尊子……電車より
 車のほうが
 疲れなくていいなーって
 思ってたんですよ」

「やっぱりそうだよな。
 倒れて
 入院してたんだしな」




ったく、朝から
何二人で
盛り上がってるのよ。





「ほらっ、尊子。
 鞄、貸せって」



素早く奪い取った
鞄を手に持ったまま、
今度は一気に抱きあげて
階段を駆け上がる。




……ったく、
 人の気も知らないで
   いきなり何するのよ。





「祐太……。
 場所をわきまえなさいよ」






恥ずかしいじゃない。




今の私は、
ちゃんと歩けるんだから。



倒れたあの日なら、
まだしも……。







車の方に向かうと
能美さんが、
後部座席から出てきて
助手席のドアを開けてくれる。


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