【B】君の魔法
しかも……
付き合ってた時代には
車なんてなかったばすなのに……。
キョロキョロと
車内を見つめる私に
車を走らせ始めた祐太は
嬉しそうに
「いいだろう。買ったんだよ」って
語った。
この車に出会うまでの
熱い心を、熱血体育会系の
祐太らしい語り口調で。
武流さんの車とは
全く違う車、内装。
車に乗り込んでも
祐太の吸う、
煙草の匂いと
匂い玉のの匂いが
喧嘩するように交わっては
いるものの……
上品な香りは何処にもない。
車はオフィスの
駐車場に滑り込んで、
静かに止まる。
部署が違う陽菜は、
祐太にお礼を伝えて、
急ぎ早に
駆け出していく。