【B】君の魔法






ふいに空間を遮断するように
携帯の着信を告げる
バイブが静かに振動する。




「失礼」





電話を理由に、
その場から逃げ出すように
試着室となっている
リビングを抜け出した。




玄関を出て、
ポーチで
会話を続ける。





「中野。
 わかったのか」

「はいっ。
 先ほど、飯山の調査によりまして
 本社の会長ルームに
 忍び込んだものの
 身元が特定できました。

 警察に引き渡しましょうか?」

「いやっ。

 今はまだ泳がせておけ。

 今日は、
 そちらに帰る」

「静香さまは?」

「こちらで
 ゆっくりと休ませておくよ」

「かしこまりました。
 飯山に、お屋敷待機を
 申し伝えておきます」

「すまない」




電話を切って、
玄関のドアを潜る。
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