【B】君の魔法




「どうしよう。
 もう……終ったの。

 終らせた。

 私は……
 武流にふられて
 武流は
 柳さんを選んだの。
 
 今は……
 祐太だっているのに。

 どうして……」





こんなにも……
大声で泣き崩れたのは
初めてだった。





もう、
割り切ったと思ってた。




祐太との時間で、
今を取り戻して
全て忘れてしまえたと
思っていたのに。





「華南……。

 私……貴女に
 謝らなくちゃ。

 私……
 祐太のこと……」


その先を紡ぎそうになった
私の口に掌を当てると
その言葉を
ゆっくりと遮った。


「ねぇ、尊子。
 今日、
 うちに泊まりにいらっしゃい。

 逢わせたい人がいるの。

 世の中って、
 本当に広いようで狭いのね」


そう言いながら、
私を支ええるようにして
立たせると、
彼女は私の鞄と自分の鞄を手に取ると
オフィスの灯りを消して
エレベーターを降りる。


クリスタルエレベーターの外に下りてから、
最上階へと再び、向かわせ
最上階にいったところで、
エレベーターの鍵にロックをかける。



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