【B】君の魔法




「尊子」


いつものように
迎えに来た祐太。


「あっ、お兄ちゃん。
 今日、尊子をウチに招待したから」

「ウチに招待って、
 晃一さん居るのか?」



懐かしさにも似た
その呼び名に、
思わず別の顔を思い浮かべる。


中学生時代の……
私が生まれ
変わるきっかけを
くれた同級生と同じ名前。


「居るに決まってるでしょ。
 ったく、ウチの旦那苦手意識
 早く改善してよ。
 そりゃ、兄貴より優秀すぎて
 惨めになるだけかも
 知んないけど」

「うるせぇー。
 行くよ、いきゃーいいだろ」

「なら、車出してよ」



流されるままに、
祐太の言葉で向かった
大きな一軒屋。


武流さんの
家ほどではないけど……。




静かに門を潜って
駐車された車。




中から、
華南の旦那さんらしい人が
顔を出してきた。




当たり前のように
その人の腕の中に飛び込んで
キスを交わす
新婚のような二人。

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