【B】君の魔法


そんな二人を、
やってらんねぇーっとでも
言いそうに
わざとらしく
目を逸らす祐太。





儀式の後、
お互い目で見詰め合って
声を零したのは同時。


「尊子」
「晃一」



お互いの間に
流れる沈黙。



「って、
 お前ら何だよ」



痺れを切らした
祐太が声をあげる。



「ねっ、懐かしかったでしょ。
 兄貴、晃一ってさ。
 中学時代の
 尊子の彼氏だったんだ。

 世の中って、狭いよね。

 しかも……
 ウチの会長、
 尊子と晃一の
 同級生って言うんだもん。

 狭すぎでしょ」




促されるままに
家の中に、あがりこんで
聞かされた言葉。



リビングの
ソファーに座ると
華南がすぐに
お茶を並べてくれる。




「尊子、
 久しぶり」

「まぁね。

 まぁ……結婚は、
 誰よりも遅く行き遅れてるけど」


少し皮肉めいて伝える。

   

そんな二人の会話を、
不機嫌そうに見守る祐太。


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