【B】君の魔法
「あぁ。
後でリビングに
持って行くよ」
「今日は、
結婚式の打ち合わせよ」
「あぁ。
だが、静香、一人で行ってくれないか?
静香が思うようにプランを組んでくれて
構わないよ。
今、仕事が山場で手が放せないんだ」
追い詰められた素振りで、
仮面を被ったまま、
今日も荷物を手にして、
逃げるように
静香のマンションを後にする。
彼女をどれだけ相手していても、
心は尊子を求めてしまう。
眠れぬ夜は……
何日も続き、
新居である
静香のマンションに戻っても
眠れる気配はない。
マンションに戻らず、
自宅屋敷に……
ひと時の休息を求めて
帰宅する日々。