【B】君の魔法
彼女は、視線を
ゆっくりと俺の方へ移す。
「君は……
これから
どうするつもりなんだ?」
向き直った瞳に、
俺が問いかけられた言葉は
彼女を案じるもの。
彼女を蔑んで
その場で終らせることが
出来ないのは
複雑な恋心の行方を
俺自身も身を持って
知ってしまったから。
「会長との婚約は
破棄します。
私がこれ以上、
貴方を縛るなんて
出来ないから」
「仕事は?」
「また何処かで
はじめると思うわ。
ただ……
元の会社にって
言うわけには行かないもの」
彼女はゆっくりと
目を伏せて微笑んだ。