【B】君の魔法




「あぁ、
 そうさせて貰うよ」

「会長……。

 雪路さんに……
 素直に話してみたら?

 どれだけ赤ちゃんで
 会長を縛ろうとしても
 会長の体は縛れても、
 心までは縛れなかったわ。

 雪路さんの隣のときのように
私の隣で、
 会長が笑うことはなかったもの。
 
 心は決まっていたのよ。

 私なんかが
 入る隙間もないくらいに
ぎっしりと。

 まるで御伽噺の魔女や、
 継母みたいな、
 そんな役回りね」

「君を通して……
 俺は、尊子への思いを
 見つめなおすことが出来たよ」

「あらっ、会長。

 感謝なんてされたくないわ」



砕けたような言葉の後、
彼女は
少しの間をおいて、 
ベッドの上で、
姿勢を正すように
少し動いた。
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