【B】君の魔法
「はい」
「武流さま。
夜分に申し訳ありません。
急ぎお伝えしたいことが
ありまして、
お電話させて頂きました。
先ほど、雪路様が
お屋敷を尋ねて来られました」
尊子が
……自宅へ……。
「今も、居るのか?」
「いいえ。
武流さまの不在を
お伝えしますと、
滞在をオススメしたのですが、
タクシーでどちらかに
行かれました」
残念そうに紡ぐ
中野の言葉に
俺自身も肩を落とす。
こんなにも、
尊子のことだけで……
俺の心が
少しずつ解放されて
俺の知らない俺自身に
振り回されて、戸惑って、
呆れ返って……。