【B】君の魔法
「どうして?
どうして……
こんなにも掻き乱すのよ。
私の心を弄んで」
今までの彼女では
考えられないほどに
俺の前で取り乱して
泣き崩れる彼女。
「適わないのに……
どうして現れるのよ。
勇気を出して尋ねた
貴方の家に、
武流さんは居なかったわ。
逢えなかった。
だから……
もう終ったんだと
必死に車の中で
言い聞かせて
帰ってきたのに……。
どうして……
貴方が、
この場所に居るのよ……」
肩を震わせて、
泣き崩れる彼女の肩を
両手で
そっと抱き寄せる。