【B】君の魔法
カチャリ。
扉を開けた音で
彼女は、
束の間の眠りから覚める。
「あっ、ごめんなさい。
私……」
恥らうように呟く。
「俺は構わない。
こんなに遅くまで
すまない。
中野は?」
「良くしていただきました。
お風呂まで頂いてしまって
有難う存じます」
「そう。
はいっ、これ……」
手にしていたコートを
彼女の方へと手渡す。
ゆっくりと手を伸ばした
彼女は、
そのコートを広げて
染みのついていた部分を
指でなぞる。
「まぁ、
貴方が?」
「時間はかかってしまったけど、
これでもう新品同様に
綺麗になったと思うな」
彼女は、
少し頬を赤らめて
柔らかに微笑む。