【B】君の魔法



一人残された部屋。




洗面所の前で
髪を乾かして、
メイクを終えて……
彼が仕度してくれた
洋服に身を包む。



やっぱり。


素敵だわ。
有村千草。



髪を結い上げて
鏡の前で
柔らかく微笑む。



ゆっくりとドアを開けて
記憶を手がかりに
リビング
だったはずの場所へと
移動していく。




「おはようございます。
 尊子さま、
 リビングまでご案内致します」



昨日、相手をしてくれた
中野さんが
半分迷子になっていた
私に
さり気なく
手を差し出してくれる。
< 59 / 339 >

この作品をシェア

pagetop