【B】君の魔法
一人残された部屋。
洗面所の前で
髪を乾かして、
メイクを終えて……
彼が仕度してくれた
洋服に身を包む。
やっぱり。
素敵だわ。
有村千草。
髪を結い上げて
鏡の前で
柔らかく微笑む。
ゆっくりとドアを開けて
記憶を手がかりに
リビング
だったはずの場所へと
移動していく。
「おはようございます。
尊子さま、
リビングまでご案内致します」
昨日、相手をしてくれた
中野さんが
半分迷子になっていた
私に
さり気なく
手を差し出してくれる。