【B】君の魔法


「初めまして。
 雪路尊子と申します。
 この度、こちらの武流さんに
 ご縁を頂いて、
 こちらの本社ビルまで
 お邪魔させて頂きました。
 こちらのデザインが大好きで
 日頃から
 愛用させて頂いています」




ゆったりとした口調で
品のある物言い。

そして……
相手を品定めするように
柔らかに降りしきる
見えない針。



当たり障りのない言葉だけに
騙されては……
尊子とは対等に
渡り合えない。



「当社の商品をご愛用頂きまして
 有難うございます。
 どうぞ、奥の間へ。
 出雲さま、雪路さま
 ご案内させて頂きます」


自分が特別だと
思わせる待遇の数々に
溺れるだけの
愚かな女もいれば……
その場所でも
自分の足元を見極めて
一人で立とうとする存在。

< 69 / 339 >

この作品をシェア

pagetop