妖鬼幽伝




あの不気味な妖に殺されるのも嫌だが、この狐擬き(モドキ)に喰われるのも嫌だ。

しかし、自分一人ではどうしょうもない。






「・・・・・あっ・・・」






追い詰められれば、人間誰しも頭は普段の倍働く。
まさにハツの現状だった。






「・・・ねぇ、最後に君の名前を教えてよ」



「名前?」



「どーせ、狐とかじゃないんでしょ?」






当たり前じゃ、と不機嫌そうに言った。






「最後・・・ということは、答を決めたのか?」



「うん」



「・・・・・まあいいじゃろう。
俺は銀弧という妖の゙銀零(ギンレイ)゙じゃ」



「そのまま」



「黙れ」



「・・・・・そっか。私はハツ。澤田羽津だよ」



「ババくさい名前じゃの」



「黙れ」




――――ガタガタ





「!!」



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