妖鬼幽伝
縛り縄と封印紙
教室のドア、窓、机、棚が小刻みに揺れ出した。
驚き辺りをキョロキョロとするハツにくらべ、狐・・・銀零は目を細めて一点を見つめていた。
「な、何・・・?地震・・・?」
「床は揺れとらんだろう」
「そ、そっか・・・じゃあ・・・」
何?と聞こうとしたハツだったが、それは出来なかった。
ガラスというガラスの全てが一気に割れたのだ。
「なっ・・・」
「来るぞ」
「ッ!!」
銀零が言ったそのすぐ後、窓の外に人影が浮かび上がった。
ガタ、と後ろの扉に背中をぶつけたハツを、チラと見た銀零。
「そういえば、お主の答をまだ聞いとらんかったのぅ」
どうするんじゃ?と銀零が聞くと、ハツは窓の外の妖を見て手元の本をギュッと握りしめた。
そして一度強く目を閉じると、次に目を開けた時には何かを決意した目だった。
「・・・・・」
訝しげにそんなハツを見た銀零はギョッとした。
なぜなら、ハツが割れた窓ガラスの破片を手に取ると、制服の袖を捲り一瞬の躊躇の後己の腕に切りつけたからだ。
「お主、何をして・・・・・」
「私は!!まだ死ぬわけにはいかないの・・・・・」
銀零の言葉を遮るかのようにハツは痛みに耐える表情で言った。