妖鬼幽伝




夕刻――――――。








「・・・・・アレ?おかしいな・・・」





自然に囲まれたとある学校の図書室の脇にある図書倉庫。
そこには、今年二年生となったばかりの澤田羽津(サワダハツ)がいた。

中腰になって、乱雑に押し込められている本のラベルを一つ一つ目と指で追っている姿から、何か探している様子。






「・・・・・ん?」






ピタリ、とハツは一冊の本の前で止まると、その本を半ば無理矢理引き抜いた。
その拍子に、両脇にあった数冊が床へと落ちたが。






「これ、何の本だろ?」






背表紙に何も書かれていない本は始めて見たハツ。






「本っていうより、紙束って感じ・・・」






ハツが言うように、所々すす切れたその本は表と裏に抹茶色をした厚めの紙があり、その間に紙が何重もあるものだった。

その紙を束ねているのは、真っ赤な紐だった。




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