妖鬼幽伝
空凪【からなぎ】
もうそろそろ日が暮れて、部活動生もほとんどいなくなった頃にハツは校舎内にいた。
「ひどいよ銀零。起こしてくれたっていいのに」
「どうしようと俺の勝手じゃ。
起きなかったお主が悪いんじゃろう」
「そうだけどさ・・・」
屋上で一眠りして誰よりも早く帰ろうと思っていたハツだったが、目が覚めて空を見れば見事な夕焼け色に染まっていた。
ええっ!?とフェンスを鷲掴みしてグラウンドを見れば、ちょうど部活の生徒が後片付けをしていたり帰ったりしていた。
・・・で、今に至る。
「もう・・・油揚げあげないよ?」
「勝手に食べるから関係ない」
「・・・・・・。あれ?」
階段をおりていたハツは違和感に気づき踊り場で立ち止まった。
目の前には大きな鏡が壁に備え付けられており、ハツの全身を映し出している。
「どうした?」
下から急に立ち止まったハツにたずねる銀零。