妖鬼幽伝
その後すぐにハツと銀零は階段の踊場の鏡の前に来た。
まあ、すぐと言っても鏡がある踊場までたどり着くまでに二、三十分はかかったのだが。
「やれ、ハツ」
「うん・・・」
鏡越しに銀零を見つめ返しながら、力強く頷いたハツは妖鬼幽伝から縛り縄を解いた。
「゙汝の自由は我の自由゙」
鏡に向かって縛り縄を唱えながら投げやると、縛り縄は吸い込まれるかのように鏡の中へと消えた。
「すごい!!ホントに入った」
「ぼさっとせんで続けろバカハツ!空凪が出て来るぞ」
「え?」
銀零の言葉に振り返ったハツ。
その時鏡に影が蠢き亀裂が入った。
「チッ」
舌打ちして銀零が動き出したのと、ハツの背後で鏡が凄まじい音と共に砕け散ったのは同時だった。