妖鬼幽伝
ハツは足元に落ちていたガラス片を拾い上げ、尖った先を頁に突き立てた。
「゙汝の住処は我の手中なり゙」
そして空凪は紐を残して消えていた。
ホッと頁に炭で描かれた空凪を見たハツは妖鬼幽伝を閉じ縛り縄を拾い上げ縛った。
「そういえば銀零、空凪を喰べるって意気込んでいたけど・・・」
「もう喰ったぞ」
「え!?いつのまに?」
「封印と同時に」
あっけらかんと答えた銀零にえ〜・・・とハツは視線を向けていたが、銀零に気にした様子はなかった。
「そら、さっさと帰るぞ。夜闇は人外のものの時間なのじゃからな」
「え・・・・・・」
先に歩き出した銀零の言葉にハツは銀零を見つめる。
そんなハツの視線に気づいた銀零は首だけ振り返りニヤリと笑んだ。
「人間は光明のもとにいろと言うことじゃ」
それだけ言うと今度こそ銀零は足音もなく先へと歩き出した。
―――――この日の夜は、いつもの夜より闇が濃いような気がした・・・・・・。
銀零の後ろ姿をみていたハツは窓の外に視線を向け、ふとそう思ったことに不安げに目を細めた。
To be Continued・・・