妖鬼幽伝
「――――――んっ・・・」
ゆっくりと目を開けたハツは、身体に乗った本や落ちた時の衝撃で身体のあちこちが痛かった。
「・・・私、よく生きてたな」
と、自分で自分を本に三分の二埋まった状態で褒めた。
いい加減に起きなくてはと、腕を思いっきり勢いをつけて本から抜け出した。
「・・・ん?」
そして、手の中に違和感を感じたハツは、なんだと見て首を傾げた。
その手には、赤い紐が握られていた。
「なにこれ?」
なぜ自分は紐を?と思うと同時に、なんだか見覚えがあるきが・・・とハツは考えていた。
「んー?なんの紐だっけ・・・」
「おいおい、縛り縄を解いたのか・・・」
「(へ?)」
突如聞こえた声に、しかも上からの声にハツはそちらへと顔を向けた。
「馬鹿なことをしたのぅ・・・まぁ、俺には関係ないことじゃ」
「・・・・・犬?」
ハツがおとしたせいで開いた棚のスペースに、真っ白な小型の丸っこいもふもふした・・・まさしく犬がいた。
ちょっとデブかったから、一瞬ハツは狸かと思った。