妖鬼幽伝
ぎょっとしながら声をあげたハツに構わず、夏騎はそう言うとハツを自分のクラスまで引っ張り出した。
「ちょっと・・・先輩!」
「ふんふふーん♪」
ハツが困惑しながら夏騎を後ろから呼ぶが、夏騎は鼻歌を歌いながらさっさと歩き出す。
後ろで女の子達が残念そうな声がハツの耳に聞こえてきた。
――――――――――――――――――・・・
「はあ〜・・・」
夜、外を歩きながらハツは盛大にため息を吐いていた。
「なんじゃ、ため息なんぞ吐いて」
何もないところに話すのはイヤ、ということで銀零は携帯になってた。
「原因なんか言わなくてもわかるでしょー」
「あの男か」
そー、とハツは頷く。
「あの夏騎とかいう男、お前にベタ惚れのようじゃが?」
「嬉しくないよ。知らないけど、入学して数ヶ月後ぐらいから付きまとわれてんの」
「物好きなものもいたものじゃな」
「・・・(その言い方は傷つく・・・)」
複雑なハツだった。
「結局あいつ、駅までついてきたな」
「ホント・・・あの人しつこすぎなの」
また、深い溜め息をこぼした。