妖鬼幽伝



その犬(仮)はハツが自分を見て発言したことに驚いたのか、真ん丸の目をさらに丸め見開いた。






「ほぅ、お主俺が見えるのか」


「見えるのかって・・・アナタ、まさか幽霊?それとも妖?」



「どちらかと言えば、妖かのぅ」







どちらかと言えば、というのにハツは若干気になったが、そこは流すことにした。







「それにしてもお主、俺を見ても怖がらないんだな」



「・・・・・昔から、君みたいなのをよく見てたし・・・犬は好きだし」



「なっ・・・俺は犬ではないぞ」



「え、じゃあ狸?」



「ちがわい!狐じゃ狐」







全く見当はずれの答えに、ハツはその狐と言った妖をじっとみた。


言われてみれば・・・狐に見えなくはないかな・・・?







「君、狐の妖なんだ。かわいーね」



「今は起きたばかりだからのぅ、力が足りねぇんだ」



「じゃあ、それが本当の姿じゃないんだ」



「そうじゃな。力を蓄えるために、より力の強い人間を食べようと探していたんじゃが・・・」


「・・・・・・・・・・えっ」







そこまで聞いて、ハツは顔を青ざめて犬・・・・・ではなく狐を見上げて固まった。
狐はハツに向かってニヤリと笑った。









「イイ食料が見つかった」





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