妖鬼幽伝
「あやつが現れたのは、お主が縛り縄を解いたのが原因じゃ」
「縛り縄?」
「今手に持っているじゃろう」
「・・・もしかして、この紐?」
前足でハツの右手を指した狐に、ハツは顔の高さまでその紐を持ってきた。
「そうじゃ。本をあけて見ろ」
「・・・・・・・・・・真っ白だよ?」
パラパラと本を捲ったが、どのページにも何も書かれていなかった。
「その本は元は封印紙(フウインシ)という名でのぅ。昔、梁鯉(ヤナリ)という女が危害を加える霊・妖・鬼・・・人外のものをその本に閉じこめたのじゃ」
「・・・・・まさか、私がこの縛り縄とかいう紐を解いたから、その閉じこめた人外の者達がこの本から出て行った・・・・・とか?」
「物分かりがいいのぅお主」
顔が引きつるのを感じながら狐に尋ねてかえってきた言葉に、ハツは嬉しくないと思った。
「で、そこで提案があるんじゃが・・・」
「えっ?」
「俺があやつの封印方法を教えてやるから、封印し終えたらお主を喰わせろ」
「却下」
凄い名案みたいな笑顔で言った狐に即答したハツ。