キミノトナリ(短編)
―――忘れないで。

違う場所。

違う時間。

違う空の下で。

あなたを想う誰かが、きっといるから。




パサリと立ち上がった少女に、微笑みが浮かぶ。

「おじいさん、またお話できる?」

「いつでも来なさい。私はここにいる」

にこりと笑った少女は、羽が生えたように走り出した。

その姿を見送ってから、老人はふうと空を見上げる。

「…そうだったら、とても嬉しいな」

歪めるような笑みを浮かべて。

風が吹き、老人の姿はふわり、と消えた。
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