ひとりぼっちの君へ
1.導かれるように
期末テストは散々だった。

いや、結果はまだ出てはいないんだけど、もう目に見えている。
高校三年生の1学期、周りは進学だの就職だの焦っているのに、俺はまだ何も決めていない。


焦りすら、ない。


永遠に高校生で居れるなんて思っていないけど、あくせく働く社会人には絶対になりたくなかった。
このまま、大学か専門学校に行くのかなぁ、なんて、先の見えない未来。

空はこんなに青いのに、俺の心は晴れてくれない。


「松本ー!このあと打ち上げやるけど!」
「なんの?」
「テストのに決まってんじゃん!」


友達の西村がひゃひゃっと笑って、俺の肩に体重を預けてくる。「もちろん行くだろ?」なんて、輝いた瞳が俺を覗き込んだ。


「なんで」
「お前が来てくれたら、椎名さんが来てくれんの」
「はぁ、」


打ち上げったっていつものカラオケからファーストフードでの食事コースだろ。特別なことなんて何もない。
でもまぁ、こうやって友達と騒ぐのは嫌いではない。いや、むしろ青春を謳歌しなければならないんじゃないか。椎名さん、可愛いしな


「あ、いっとくけど、椎名さんは俺が狙ってんだからな」
「おまっ、俺をえさに釣る気かよ!」
「当たり前だろ、お前顔だけは良いんだから」
「だけってなんだよ」


いつのまにか二人分の鞄を持ってきた西村は、半ば強引に俺を教室から引っ張りだす。
そこには3、4人のクラスメイト。その中ではにかむ椎名さんと、ぱちりと目が合った。


「さーいこいこっ!まずはカラオケー!」


テストの開放感からみんないつもより浮き足立っていて、俺はその輪の中心にいて

だけど、どこか、周りから置いていかれたような気持ちを感じていた。

いつも、いつも






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