Colorless Life
 私はただ新田さんを見ていることしかできなかった・・・。

 「勇治君はね・・・・、ほんとは・・・、すごくいい顔して笑うんだよ・・・・。笑顔だけで人を幸せにできるくらい・・・、いい顔するの・・・。」

 それは私も知ってる・・・。
 あの時あの笑顔を見なかったら・・・、私はここにいないかもしれない・・・。お父さんとお母さんの死から立ち直ることもできなかったかもしれない・・・・。
 彼の笑顔には・・・、私だって沢山助けられてきたんだから・・・。

 「でも・・・、遥がいなくなって・・・、勇治君、全然笑ってくれなくなった・・・・。私はあの笑顔が見たいのに・・・。あの笑顔が・・・・、大好きなのに・・・・。」

 新田さんは・・・、真田君のことが好きなんだ・・・・。
 痛いほど彼女の思いが伝わってきて、涙が出てきた・・・。

 「だからお願い!勇治君には近づかないで!!」
 新田さんは目に涙をいっぱい浮かべて私を見た。
 「無茶なお願いなのは十分分かってる!朝倉さんに失礼なのも、私が自分勝手なのも、全部分かってる!!でも勇治君の悲しそうな顔は・・・・、もうこれ以上見たくないの!!!」
 「新田・・さん・・。」
 必死で搾り出した言葉はこれだけだった。
 声が震えて、それすらもまともに言えなかった。
 「お願い・・・・、お願いだから・・・。ぅうっ・・・ひくっ・・・うっ・・・。」
 新田さんはこれ以上は言葉が出せないほど泣き崩れていた。

 夕日に照らされた噴水の水音が、彼女の泣き声をやさしく包み込んでいた。

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