Colorless Life
 先生は話し始めた。

 「2,3ヶ月前、市内の歩行者天国で通り魔事件が発生したことは皆さん知っていることと思います。」

 ・・・・・・!!
 思い出したくない過去を掘り返された気分だった・・・。

 「ニュースで報道された通り、犯人は18歳の青年です。彼は無差別に通行人に切りかかり、死傷者を20名以上出しました。」

 ・・・・・・・。

 「日本の刑事裁判では通常、2名以上の被害者を基準として殺人罪に対する刑罰として死刑を言い渡すそうです。ということはこの青年には死刑が言い渡される可能性が非常に高くなってきます。」

 これって・・・、もしかして・・・・。

 「しかし、彼はまだわずか18歳の青年です。将来あるこの命を奪ってもよいのかということにつき、現在数多くの議論がなされています。」

 ・・・・・・・。

 「皆さんはこの事件について、どのように考えますか?今日は全クラス共通で“死刑制度”の存在意義について話し合うことになりました。」

 ・・・・・・やっぱり・・・・。

 「皆さんの自由な意見を聞かせてください。賛成・反対にかかわらず、思うことを言ってほしいと思います。クラス委員は出た意見を黒板にまとめていってもらえますか?」
 私は黒板の前に立った。

 心臓の鼓動が少しずつ早まっていくのを感じていた・・・。

 誰も発言者のないまま数分が経過した・・・。
 と、その時・・・。
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