Colorless Life
 先生は生徒を見送りながらも焦点の定まらない目をしていた。

 「先生・・?」
 もう1度声をかけると、先生はびくっとして私を見た。
 「あ、は、はい・・?」
 「この意見どうしたらいいですか・・?」
 先生は忘れていたかのようにはっとして、黒板を見た。
 「そ、そうですね・・・。それじゃあ、朝倉さん、な、何か用紙にまとめて後で私のところに持ってきてもらっても・・・、い、いいですか?」
 「分かりました・・。」
 「よ、よろしくお願いします・・・・。」

 先生は肩を落として、ゆっくりした足取りで教室を出て行った。
 先生・・・、相当落ち込んでるなぁ・・・・。
 先生が少しかわいそうだった・・・・。

 私は教室で黒板の意見を用紙にまとめ、それを持って職員室に行った。
 職員室の中で藤村君とすれ違った。
 藤村君は黙ったまま、悲しそうな顔で私に微笑みかけた。

 私は井上先生の席までやって来た。
 先生はまだ落ち込んでいた。小さな背中がさらに小さく見えた。
 「先生、意見まとめて持って来ました・・・。」
 先生は落ち込んでいるのを悟られまいと、無理に笑顔を作った。
 「あっ、ありがとね・・・、朝倉さん・・・・。」
 机に向かった先生の背中があまりに悲しげで、私は思わず先生に声をかけた。

 「先生・・・、元気出してください・・・。」
 先生は驚くように振り返った。落ち込んでるのがばれてないと思ったのかな・・・。
 「えっ、あっ、あのっ・・・・・。」

 先生はしばらく戸惑った後、悲しそうに下を見た。
< 120 / 191 >

この作品をシェア

pagetop