Colorless Life
 真田君と2人で廊下を歩いた。

 「真田君が職員室に行くなんて珍しいよね。」
 「あぁ、うん・・・。少し先生に用があったから・・・。」
 「風邪はもう治った?」
 「うん。おかげさまで・・・。」
 「そっか~。」
 少し動揺が収まってきたのか、会話に元気が戻ってきた。

 「あ、そうだ。ノートありがとう。」
 「いえいえ~、役に立っていればいいけど。」
 「すごく助かったよ。あー、でも・・・。」
 「ん?なんか変なとこあった?」
 話の途中で教室に到着した。
 「あ、ちょっとごめん。」
 彼はそう言うと、教室に1人で入っていって教壇の上に立った。

 教室は彼の登場に静まり返った・・・。

 ・・・なんだろ・・・・。
 彼を見守っていると、彼はみんなに対して頭を下げた。

 「みんな・・・ごめん。この前は1人で勝手に暴走して・・・本当にごめん。」

 ・・・真田君・・・・・。
 あれだけ人間関係を拒絶してきた真田君が、みんなに謝ってる・・・・。
 この事態が、いかにすごい進歩だったかは、その時は気がつかなかった。

 教室が静まり返っていると、藤村君が真田君に近寄って肩を叩いた。
 「おはよう!」
 「お、おはよう。」
 「真田、おはよう。」
 根岸君が真田君に笑顔で挨拶していた。
 「おは・・・よう・・・。」
 藤村君はそれを見届けると、真田君の頭を軽く叩いて席に戻っていった。

 教室には再び笑い声が戻ってきた。

 今更になって、すごく嬉しくなってきた。
 彼を笑顔にしたいと望む人たちの気持ちは、少しずつだけど彼の心に届いていたんだと思った。
 だからこそ彼は、クラスのみんなに謝ることによって、1度壊れかけた人間関係を元に戻そうとしたんだよね。

 ゆっくりと彼の隣に歩いていった。
 少し驚きの残った彼の瞳に満面の笑みを投げかけた。

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