Colorless Life
 私たちは、体育館の渡り廊下まで移動した。

 ここ数日部活動がなかったから、水野君と顔を合わせるのは今日が久しぶりだった。
 体育館にはバレー部とバスケ部の掛け声が響いていた。

 「わざわざここまで移動したってことは、返事聞かせてくれるのか?」
 水野君が練習予定表を手渡しながら先に口を開いた。
 「あっ、ありがとう・・・・。うん・・・、一応自分の気持ちに整理ついたから・・・。」
 「そっか。」
 水野君はそう言うと、真剣な顔つきで私を見た。
 強烈な視線が突き刺さってきた。

 でも、今日はそれに怖気付いてる場合じゃない・・・。しっかり自分の気持ちを伝えないと・・・!
 心を決めて、水野君の目をじっと見返した。
 「私は、水野君の気持ちには答えられない・・。」

 水野君はしばらく私を見た後、笑顔になって小さくため息をついた。
 「そっか、わかった。」
 「ごめん・・・。」

 水野君は渡り廊下の手すりに肘をかけた。
 「理由は、聞いてもいいのか?」
 「・・・・・・。」
 少し迷ってはいたけど、自分の気持ちをはっきり伝えるという決心を思い出して、話そうと思った。

 「・・・好きな人がね・・・、いるの・・・。」
 水野君は笑顔で私を見た。私は恥ずかしくなって下を向いた。
 「さっき教室に一緒にいたあいつだろ?」
 下を見たまま、小さく頷いた。
 「やっぱそうか~・・・。」

 水野君は腕を組んで手すりに背中からもたれかかった。
 「さっき教室にいた朝倉見たときに、なんとなく気付いてはいたんだけどな。」
 「で、でも、私は水野君の事は尊敬してるよ!同じ剣道をする者として、水野君の剣道は私の目標でもあるし!・・・だけど・・・。」
 「恋愛の対象にはならないってやつか?」
 「・・・・うん・・・・。ごめん・・・・。」
 うつむき加減に話すと、水野君は笑った。
 「はははっ、そいつは参ったな。」
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