Colorless Life
 「・・・・・・・。真田君・・・・、ひどいよ・・・・。せっかく・・・・、必死で前に進んでたのに・・・・。どうして・・・、どうしてそんなこと言うのよぉ・・・・。」

 涙はもう止まらなくなっていた・・・。
 何度も何度も手で拭うのに、涙は次から次へとあふれてきた・・・。

 「・・・・うっ・・・。私にだって分かるのに・・・・ぐすっ・・・・。私だって・・・・、お父さんとお母さんが・・・・うぅっ・・・ぐすっ・・・・。」
 廊下には私のむせび泣く声だけが木霊していた・・・。

 「・・・・うぅっ・・・・・ぅぁぁっ・・・・。ぅぁぁぁぁぁぁぁん・・・・・。うぁぁぁぁぁぁぁぁん・・・・。」

 蛍光灯だけが照らす薄暗い廊下で、私はただ1人泣いていた・・・。

 次の日は朝から部活動があった・・・。
 朝食をとっていると、おばさんが心配そうに声をかけてくれた・・・。

 「詩織?どうしたの?大丈夫?」
 「うん・・・・。大丈夫・・・。」
 「調子悪いなら、部活動休んでもいいよ?」
 「ううん・・・。行く・・・・。」
 「そう・・・・。」
 朝食を終えて立ち上がった・・・。
 「ごちそうさま・・・。行ってきます・・・・。」

 学校までゆっくり歩いた・・・。

 昨日、空けてしまった過去の蓋をもう1度閉めるのには、かなりの労力が必要だった・・・。
 今の私には、それを閉めるだけの力が残っていなかった・・・。

 今まで前だけを見て必死に生きてきたけど、やっぱりそれは自分の本当の気持ちに嘘をついて生きてきたんだってことにも気付かされた・・・。

 「私は結局・・・、元気な振りをしていただけなのかな・・・・。」
 歩きながらそう1人でつぶやいた・・・。

 だからといって、こんな調子で竹刀を振るわけにはいかなかった。
 優希だって、こんな私を見たら絶対に心配するから・・・・。

 空を見上げた。きれいな青空。小鳥たちも気持ちよさそう。
 目を閉じて2回深呼吸し、ゆっくり目を開いた。
 「よし、いこ。」
 少し早足で学校に向かった。

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