Colorless Life
 墓地は昨日来た時と変らず、誰もいなかった。

 石段を登りながら石段の上方を見上げた。
 あそこに・・・、朝倉が住んでるんだ・・・・。

 明美は遥の墓の方に向かった。俺は彼女についていった。

 遥の墓の前で目を閉じて手を合わせた。

 「・・・もう・・・、1ヶ月になるんだね・・・。」
 「・・・・。」
 黙って墓石を見つめていた。

 「まだ・・・、忘れられない・・・よね・・・?」
 「ははは・・・。」

 “まだ”じゃない・・・。
 俺は、一生遥のことを忘れるつもりはなかった。
 だけど、そんなこと言えば、心配性のこいつはいっそう俺のことを心配すると思ったから、敢えて言わなかった。

 「勇治君のせいじゃないんだからね・・・。自分だけ背負い込んだらダメだよ・・・。」
 「・・・・ありがとう。」
 とりあえず精一杯の笑顔を見せた。もっとも実際に笑っていたかどうかは分からないが・・・。

 みんな誰一人として俺を責めなかった・・・。
 お前のせいじゃない、お前が責任を感じる必要はない、とみんな口を揃えて言った・・・。
 だけど・・・。

 俺は・・・。俺は・・・・・。

 「帰ろっか。」
 明美の声が迷想を止めてくれた。
 「そうだな・・・。」
 
 石段を下りて行くと正面から朝倉が上ってきた。

 またか・・・。
 もう驚きはしなかった。寺に住んでいるのならこういうこともある。
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