Colorless Life
 この笑顔を今、独り占めしていることがすごく幸せで私も笑顔になった。
 「ふぅ、やっと見られた・・・。」
 「え?何?」
 「ふふふっ、秘密~。」

 不思議そうな顔をして首をかしげる彼を横目に、私は暫し幸せをかみしめていた。

 「ところで、俺が死刑の話で暴走した時さ、黒板で何してたの?」
 「ん?あ~、真田君が言ったこと忘れないように黒板に書いておいたんだよ。」
 「えっ!?ちょっ!ちょっと!なんか必死にやってると思ったらそんなことしてたのか!うわぁ・・・、今更恥ずかしくなってきた・・・。」
 「気にしない気にしない!クラスの有名人になれたんだからいいじゃん!」
 「うわっ!ひでー!誰のせいだよ!」
 「あははははっ!」

 私はすごく幸せだった・・・。
 こんな時間を彼と一緒に過ごすことができるなんて夢のようだった。
 この笑顔があったらどんな困難も乗り越えていけると思った。

 最初は不安だったけど、やっぱりあの場所に戻ってよかった・・・。
 真田君のこんな素敵な笑顔を見ることができたんだから!

 車両の中には私たちの笑い声とともに幸せな気持ちも広がっていった・・・。

 私たちは柏木町の墓地に帰ってきた。石段を数段駆け上がって真田君を見た。
 「今日はありがとね。次また後向きになりそうだったら私に言いなさい!回れ右させてあげますわよ!」
 「な~にを偉そうに~。そっちこそ、猪みたいに前ばっか突っ込んでたら落とし穴に落としてやる!」
 「えー!なんかひどくない?それー!」
 私たちはまた笑った。

 「それじゃあね!」
 私が石段を上っていこうとしたその時・・・。

 「あ、し、詩織!」

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