Colorless Life
 「こら、お父さん、からかわないの~。それで詩織~、やっぱり気持ちはちゃんと伝えなきゃダメだと思わない?」
 「・・・う、うん・・・・・・。」
 「だったら真田君にぶつかっていってみなさいな。真田君がどんな答えを出そうとも、私はあなたの気持ちを彼に伝えることが大切だと思うな~。」
 「・・・・・・・・・・。」
 「詩織~。」
 おばさんは私をじっと見つめた。

 「・・・・わ、分かったよぅ・・・・。」
 うつむいたまま上目遣いにおばさんをチラッと見て、しぶしぶ返事をした。
 「はい、よろしい~。」
 「大丈夫さ~、真田君にとっても詩織は特別な存在だと思うよ~。真田君の笑顔を取り戻したのは詩織なんだろ~。もっと自信もっていってきなさい。」
 おじさんが私の肩にそっと手を添えてくれた。
 「う、うん・・・・。ありがとう・・・・。」

 部屋に戻ってベッドにうつ伏せに寝転がった。
 「告白・・・・かぁ・・・。」

 中学の時は、告白されることは何回か経験があったけど、自分から告白したことなんて1度もなかった・・・。

 自分の気持ちを伝えるってことがこんなにもドキドキするものだったなんて・・・。

 ・・・それに・・・・。
 真田君が今日言っていた言葉・・・・。

 “遥のことを忘れる訳にはいかない”
 “俺も遥も幸せになれる方法を探してみる!”

 ・・・・・・・・・・。

 きっと・・・、彼の中から沢木さんの姿が消えることは一生ないんだろうなぁ・・・・。
 彼が私を見るときには・・・・、いつもその向こうに沢木さんがいる・・・ような気がする・・・・。

 ベッドから起き上がって、机の引き出しに入れたあの写真を見た。
 彼女の笑顔もすごく素敵なものだった・・・。

 写真の中の真田君と沢木さんは2人とも本当に輝いていて、2人の間に入る余地なんて全く残されていなかった・・・・。

 私が・・・沢木さんに似ていなかったら・・・・、真田君は私のこと・・・見てくれたのかな・・・・・。

 考えれば考えるほど胸がしめつけられて苦しくなった・・・。

 この気持ちを何とかしたくて、部屋の隅に立て掛けてあった竹刀を持って部屋を出た。
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