Colorless Life
 「・・・・・・ぁぁぁあああ・・・・・・。」

 人を殴りつける音をここまで鮮明に聞いたのは、これが初めてだった・・・。

 「・・・・ぁぁぁぁぁああああああああああ・・・。あああああああああああっっ!!!!」

 ・・・・・・・!!!!

 勇治君の悲痛に似た叫び声に、体が無意識に反応した。
 胸がしめつけられるような感覚に襲われた・・・。

 「ああああああああああああああああっっ!!!!!」

 島谷君を殴る彼の拳は次第に激しくなっていった・・・。

 震える声で彼は何かを必死で伝えようとしていた・・・・。
 動かない体で彼の後姿をじっと見つめ続けた・・・。

 「ああああああああああああああああっっ!!!!!」

 ・・・・・・・・・・。

 “頼む!止めてくれ!”
 “誰か!俺を止めてくれ!!”

 ・・・・・・・・!!!!

 彼の心の声はそう叫んでいた・・・。
 勇治君・・・・。勇治君・・・・・!!!

 止めなきゃ・・・、勇治君を止めなきゃ・・・・!!!

 「お願い!藤村君!!勇治君を止めて!!お願い!!」
 動かなくなっていた体を無理やり動かして、震える声で叫んだ。

 私の悲痛な叫びに藤村君も我に返って、真田君の両腕を抱えて島谷君から無理やり引き離した。

 「典子!職員室に行って先生を呼んできて!!」
 典子も恐怖で動けなくなって泣いていた。
 「典子!!早く!!」
 典子は、はっとしたように手で涙を拭いながら廊下を走っていった。

 「あああああああああああああああああっっ!!!!」
 藤村君に引き離されても、勇治君はまだ島谷君に向かっていこうとしていた。

 藤村君は懸命に勇治君を後ろに引っ張っていた。
 「くっ・・・!勇治!もう止めろ!」
 「ああああああああっっ!!あああああああああっっ!!」
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