Colorless Life
 私たちは、しばらくその場を動くこともできなかった。

 ・・・・なんだったのよ・・・・、今のは・・・・。

 思考回路がようやく回復してきた時、真っ先に生じた疑問だった・・・。

 ・・・・・勇治君が・・・・・。
 ・・・・・あっ・・・・、勇治君・・・・・。

 私の制服の袖をつかむ典子の手を握った。
 「典子、落ち着いたら帰るんだよ、いいね。」
 典子は不安げに私を見た。
 「詩織は・・・、詩織はどこ行くの?」
 「ちょっと職員室にいって、橋本先生にさっきの事を説明してくる。勇治君があんな状態じゃ、きっとろくに状況説明もできないと思うから・・・・。」
 「詩織~・・・・。」
 心配そうに涙声で話す典子の肩に手を置いて、できるだけ笑顔を作った。
 「私は大丈夫だから、典子も今日は早く帰ったほうがいいよ。それじゃあ、また明日ね。」
 そう言い残して職員室へと向かった。
 
 職員室へ入ると橋本先生の大きな声が聞こえてきた。
 「おい、真田!聞こえてるのか!?」
 「失礼します。橋本先生、私が話します。」

 橋本先生のところまで歩いていって、事情を説明した。
 「事情はよく分かった・・・。だが真田、お前がやったのは間違いなく暴力事件なんだ。お前には何らかの処分を受けてもらうことになるが、いいな?」
 「はい・・・・・。」
 勇治君がようやく言葉を発した。
 「すみません・・・でした・・・。」

 彼はおぼつかない足取りで職員室を出た。
 「勇治!大丈夫か!?」
 廊下には藤村君がいて、職員室を出てきた勇治君に駆け寄ってきた。
 「うん・・・。ごめん・・・。」
 「島谷は大丈夫だから、心配すんな。1人で帰れるか?おじさんとおばさん呼ぼうか?」
 「うん・・・。ありがとう・・・。」
 「朝倉、ちょっとこいつ見ててくれ。俺、こいつん家に電話して迎えに来てもらうから。」
 「うん・・・、分かった・・・。」

 藤村君は廊下を走っていった。

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