Colorless Life
 ようやく5時間目の授業が終了した。

 ふと外を見ると、今にも雨が降り出しそうなほど外は暗くなっていた。

 傘を持ってくるのを忘れた。帰るまで降らなければいいけどな・・・。

 教室に井上先生が入ってきた。

 毎週月曜日の6時間目は自由授業といって、担任の先生が自由に授業できることになっている。
 さらにその影響で、月曜日は部活動も休みになり、各担任は自由授業を好きなだけ延長できるし、逆にすぐに終わらせてしまうこともできる。とにかく自由な時間だ。

 普段なら自習をさせるか、英語の補習授業をする先生だが、今日はなにやら深刻そうな面持ちで教室に入ってきたかと思ったら、黒板に大きく「死刑」と書いた。
 クラスは何事かと静まり返った。

 先生はクラスを見渡すようにしながら話し始めた。
 「2,3ヶ月前、市内の歩行者天国で通り魔事件が発生したことは皆さん知っていることと思います。」

 ・・・・・・!!!?

 な、なにを・・・言い出すんだこいつ・・・。

 僕は目つきを変えて、先生を睨みつけるように凝視した。
 「ニュースで報道された通り、犯人は18歳の青年です。彼は無差別に通行人に切りかかり、死傷者を20名以上出しました。」
 ・・・・・・・。
 「日本の刑事裁判では通常、2名以上の被害者を基準として殺人罪に対する刑罰として死刑を言い渡すそうです。ということはこの青年には死刑が言い渡される可能性が非常に高くなってきます。」

 ・・・・・・・。

 「しかし、彼はまだわずか18歳の青年です。将来あるこの命を奪ってもよいのかということにつき、現在数多くの議論がなされています。」

 ・・・自分の言ってること・・・、分かってんのか・・・。

 「皆さんはこの事件について、どのように考えますか?今日は全クラス共通で“死刑制度”の存在意義について話し合うことになりました。」

 俺はぐっと拳を握り締めて下を向いた。
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