Colorless Life
 やばい・・・、泣きそうだ・・・・。

 俺はそれでも叫ぶのを止めるわけにはいかなかった・・・。

 「国があの男を殺さないなら・・・、俺が殺してやる・・・。」

 「勇治!!」

 「理不尽に殺された人の気持ちも、それによって残された人の気持ちも分からない癖に・・・・、無責任なこと言うんじゃねぇぇぇぇっ!!!!!!」

 クラス全員が俺を見ていた・・・。
 いや、違った・・・。朝倉だけは黒板に向かって必死に何かしていた。

 ・・・くそっ・・・、涙が・・・・。
 奥歯をぐっと噛み締めて横を向いた・・・。
 いたたまれない気持ちで教室を飛び出した。

 無我夢中で自転車をこいだ。涙はすでに目からあふれ出ていた。

 ちくしょう・・・・。ちくしょう・・・・。何も知らないくせに・・・・。
 
 俺はまたここに来てしまった・・・。
 “沢木家之墓”という文字をじっと見つめたまま突っ立っていた・・・。

 雨が降り始めた。その雨は次第に本降りになっていった・・・。

 「死刑なんて・・・・、要らないってさ・・・。」
 もちろん遥は何も答えなかった・・・。

 「もう・・・、学校なんて辞めちゃおうかな・・・。」
 雨音だけが静かな墓地にしとしとと響いた・・・。

 「なんも言ってくれねぇんだよな・・・・。」

 ・・・この雨音があの日の記憶を呼び戻した・・・。

 俺があの日・・・、お前をあの場所に連れて行かなければ・・・・。

 俺があの時・・・、110番通報なんてしなければ・・・。

 俺が・・・・、お前をちゃんと・・・・。
 ・・・・ちゃんと・・・・守っていたら・・・・。

 顔は雨水と涙でぐしゃぐしゃになっていた・・・。
 出てくるのは後悔と涙、それと絶望感だけだった・・・。

 「うぅっ・・・・ぅうぅっ・・・・遥ぁっ・・・・・。」
 「うっ・・・ぅっ・・ちく・・・しょう・・・。・・・ぅちっ・・・くしょ・・・う・・・。」

 「ちくしょおおおおおおおおおおおっっ!!!!うああああああああああああああああっっっっ!!!!!!!!」

 声は雨音をかき消すかのように、墓地全体に響き渡った。

 涙は雨と同じく降り止むことはなかった・・・。
 と、その時・・・。
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