Colorless Life
 すると朝倉は、うれしそうに俺の方をじっと見た。

 突然見つめられてたじろいだ。
 「な、何・・・・?」
 「ふふふっ、私も真田君のそんな風に笑った顔始めてみたよ。」

 その時ようやく俺は気がついた・・・、自分が笑っていたことに・・・。

 遥が死んで以来、自然と笑顔になったのは初めてかもしれない。

 それだけじゃない・・・。

 人間関係に無関心だった俺が、井上先生とも、クラスのみんなとも、そして朝倉とも気まずい関係になりたくないと思っている・・・?
 高校生活が始まって、俺の中で何かが変ってきているということなのだろうか・・・。

 でもそれって・・・、遥のことを忘れつつあるってことじゃないよな・・・?
 それだけは忘れるわけにはいかない・・・。
 もし、遥のことを忘れることが変ることなのであるなら、俺は変りたくない・・・。
 あの責任は俺が一生背負わなければならないんだ・・・。

 自分のことを客観的に考えるのは難しいな・・・。

 でも、はっきり分かっていることもあった・・・。

 それは・・・、俺の中の何かを動かしているものの中心には、彼女が、朝倉詩織がいるってことだった・・・。

 「あっ、そうだ!」

 朝倉の声で現実に引き戻されて少しびくっとした。
 「つ、次は・・・何・・?」
 楽しそうに話す朝倉を恐る恐る見た。

 「真田君って放課後いつも自習してるんだよね?」
 「ま、まぁね。いつもって訳ではないけど・・・。」
 「だったら私も一緒にやってもいいかな?」

 「えっ・・・。」
 「とはいえ、部活が休みのときか、早く終わった時だけなんだけどね。」
 「は、はぁ・・・・。」

 「最近授業難しくなってきて、勉強しないといけないと思ってたんだ。一緒にやろうよ。1人より2人の方がきっと分かることも沢山あるよ!」
 「それは・・・、そうだろうけど・・・。」
 「何?嫌なんですか?ん~?」

 彼女が顔を近づけてきたから慌てて視線をそらした。
 「いえ、い、嫌じゃ・・・ないです・・・。」
 「よろしい!それじゃあ、よろしく頼む!」
 彼女は両手を腰に当てて笑った。

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