Colorless Life
 どれくらい時間が経ったのか。結構集中して勉強していた。

 時計を見ると6時を過ぎていた。外も暗くなっていた。

 「そろそろ帰ろう。だいぶ暗くなってきたし。」
 そう言うと朝倉は窓の外を見た。
 「うん・・。そうだね・・・。」

 俺たちは帰り支度を始めた。

 静まり返った教室の明かりを消して廊下に出た。
 廊下には、俺と朝倉2人の足音だけが大きく響き渡っていた・・・。

 下駄箱の付近まで来た時、彼女は突然立ち止まった・・・。

 「ん?忘れ物でもした?」
 「・・・・。」
 彼女は黙ったままだった・・・。
 うつむいたまま思いつめたような顔をしていた・・・。

 「あれ?どうか・・・した・・・?」
 彼女の方に1歩踏み出したところで突然彼女が口を開いた・・・。

 「沢木・・・遥さん・・だっけ・・・。」

 ・・・・・・!!!?

 驚いて片足を前に出したまま固まった・・・。

 「なんで・・・、その名前・・・。」

 はっとした・・・。彼女を抱きしめたあの場所・・・・。
 表情が次第に強張っていくのが自分でも分かった。

 「見た・・・のか・・・・。」
 「・・・・・。」

 「はははっ、見られちゃったか。でも、朝倉が気にすることじゃないよ。早く帰ろう。」
 なんでもないような顔をして下駄箱に向かおうとしたその時・・・。

 「逃げないで!!」

 予想外の一言だった・・・。
 ・・・はずなのに、その言葉は心の奥底にまで激しく突き刺さってきた・・・。
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